あいんの日記

映画や漫画の感想を書きます!宜しければ参考にしていただきたいです!

哀愁しんでれら

 

 

 裏おとぎ話大好きなので早速見に行ってしまった…!

 この映画のポイントは3つ

①子育ての大変さ

②理想と現実

③「常識」とは

 

①子育ての大変さ

 この映画は主人公小春が最悪なことが立て続けに起こった後に泉澤大悟が王子様のように助け出してくれる話です。しかしそれは表向きには、です。シンデレラでも上述したような綺麗な所しか書かれていません。「靴のサイズしか知らないのに結婚しても大丈夫?」現実的考えた時に出てきてしまうこの言葉を示唆するような映画でした。小春はこの王子様、大悟と結婚しますが、彼には子ども、ヒカリが居ます。子育ては楽しいことだけではないし、なんなら報われないことの方が多いと思います。ましてやヒカリは自身の子どもではありません。ヒカリが今までどのように育ってきたのか、どんな物が好きなのか、どのような性格なのかなど知らないことばかりからの子育てスタートになります。最初はヒカリと小春は上手くいっていました。それは「他人」だったからだと思います。まだ楽しいことしか経験していなくて、ヒカリのいい所しか見ていなくて、上手くいっていたのだと思います。しかしヒカリのダメなところ、絶対に直さなくてはならないところが山ほど急に出てきてしまった時に言い聞かせることは大変なことです。まだ1,2歳ぐらいの幼少期ならまだしもヒカリは小学生です。なかなか言うことを聞きません。お母さんなら経験したことがあるような苦悩に悩まされる小春の姿に似たような経験が思い出される人もいるかも知れませんね。

 

②理想と現実

 ①で子育ての大変さを挙げたのは、この②に繋がってくるからです。小春は10歳の頃(ヒカリと同じ年齢の頃)に、お母さんに捨てられた経験があります。その時に小春は「あんな母親にはならない」と固く誓いを立てます。この経験から養護センターで子どもを助けるために仕事にもつきます。日々、「ダメな」(小春にとって理想的ではない)母親を目の当たりにするにつれ、より「あんな母親にはならない」という思いは強くなります。そんな中結婚して、さらに小学生の子どもができます。小春はその「理想のお母さん」になろうに頑張ります。小春の「理想」とは何か分かりませんが、段々それと離れていく自分に我慢ならなくなっていきます。子どもをちゃんとしつけることやダメなことにはダメと言わないといけないのに、ヒカリや大悟にはそれが全く通用しません。ヒカリは好きな男の子に構ってもらうために人に害を与えたり、小春から貰ったプレゼントを捨てたりするような子どもでした。最初のヒカリの印象が段々変化していき、恐怖を感じるようになった小春は「理想のお母さん」を捨てるように心がけ、最後には自分にとっての「理想のお母さん」ではなく、ヒカリや大悟にとっての「理想のお母さん」になります。この理想と現実との間で悩む姿はとても苦しくなります。人は同じ環境にいると感覚が麻痺してくるという小春のお父さんからの言葉がありますが、本当にその通りたまと思います。小春は今置かれている状況にしがみつくために理想から「理想」に変化していき恐ろしい事件を起こしてしまったのだと思います。

 

③「常識」とは

 映画内で左耳を押さえるシーンが何度か見受けられます。何か「理想」から大きく離れている、または「常識」から大きく離れていると自分が感じた時に大悟の時は感じました。しかし、ヒカリと小春が押さえる時は一般的な常識を跳ね除けて、自分の「常識」を通そうとする時にこの動作を行っているように感じました。ヒカリは好きな男の子と話している女の子のことを邪魔だと思い、窓から落とそうと考えている時にしていました。これは本当にヒカリが実行したのかは分かりませんが、これが最終的に事件へと繋がります。小春は左耳を押さえるのではなく、髪を抜きます。最初は周りの声に耳を貸すことをやめ、大悟とヒカリの「常識」を受け入れるために行っていた動作でした。そして最後にはヒカリと同じような状況に対して行っています。そのためもしかしたら小春は最後にはとてつもなく迷惑なモンスターペアレントになりますが、ずっと違和感は確実に心の中に持っていたのではないでしょうか。しかし離婚が自分にとってトラウマだったことから絶対に離婚はダメだと思っていて一生懸命すがりついていたのだと思います。だから間違っていることをヒカリが言っていたとしても合っている、合っている、と言い聞かせていたのではないでしょうか。小春と大悟は女の子をヒカリが落としていないと信じながらも疑う気持ちもありました。ヒカリに確認すると、2人は自分のために何もしてくれないと泣きながら訴えられます。その姿に2人は親へ訴えた気持ちを思い出してしまい、こんな気持ちにはさせないようにしようと思っていたのにと酷く反省してしまいます。ヒカリのために何ができるだろうと考えた結果、みんなを殺すことでした。小春はヒカリの友達からヒカリちゃんはやっていないよ!という励ましの手紙を貰った時にはもう手遅れでした。小春はやってしまったという思いを表すかのように手紙を落とし、張り付いたような笑顔をしていますが、大悟を見ると「常識」にとらわれた小春に戻ってしまいます。このシーンはとても印象的でした。手紙を落とした時に表情が本当になんともいえないのです。この映画はサスペンスでありながら実際の家庭や子育てを思い出されるようなシーンがあるように思います。子どものことは信じたいけど…でも…ということって本当にたくさんあると思います。その真偽が致命的な結果を招く可能性があるから信じたいのに信じきれない思いがあります。過度に信じた結果、このような最悪な結果になることもあることを揶揄するように描かれた映画でした。

 

感想

 めちゃくちゃ本当に面白かったし、子育てって大変だなとぼんやり思いました。ただ理想と現実の折り合いを一生懸命つけようとしている小春の姿は可哀想と思ってしまいました。その葛藤を演じることができた土屋太鳳ちゃんは凄い思いましたし、断られても3度もお願いした監督もすごいと思いました。監督の渡部良平さんは三月のライオンも監督していて、感情表現をキメ細やかに大胆に表すことや雰囲気をこちらまで感じてしまうぐらいリアルに表すことが上手です。そのためここまで非道で現実的で感情豊かな映画が出来たのではないでしょうか。またヒカリ役のcocoは子ども純粋で非道な姿をそのまま形にしたような役で、うわーと顔をゆがめてしまいながらも、子どもだしなとも思ってしまうような子供らしさがありました。だから実際にいる子どもを思い出してしまい、絶対に誰が悪いと言えなくなってしまいました。このあやふやさが凄くいい味をだしていて、今までの映画の中でも当たり中の当たりでした。子育てをしている人に特に見て欲しい映画です。